− 私本日本書紀 −

巻二

第五話 火闌降命と彦火火出見尊

瓊瓊杵尊(ににぎのみこと)と木花開耶姫(このはなさくやひめ)との間に生まれた三人の子のうち、火闌降命(ほのすそりのみこと)は海の幸を得る力を、彦火火出見尊(ひこほほでみのみこと)は山の幸を得る力を持っていた。

(作者注)
この話は古事記や日本書紀の異説の中一つには海幸彦、山幸彦の話として登場している。

兄の火闌降命は風が吹いたり、雨が降ると幸を得ることが出来なかった。弟の彦火火出見尊は天気に関係なく幸を得ることが出来た。兄はそれをうらやましく思っていた。ある日その二人の間でこんな会話が交わされた。

火闌降命> 私は来る日も来る日も海の幸ばかり採っている。

彦火火出見尊> 私も山の幸ばかりです。

火闌降命> そこでためしに二人の幸を取り替えてみないか。

彦火火出見尊> ???

火闌降命> お前の弓と私の釣り針を交換しないかと言っているんだ。

彦火火出見尊> それは面白そうですね。

こうして二人は互いの幸を交換した。兄の火闌降命は弟の弓を持って山に向かい獣を探したが、足跡さえ見つからなかった。弟の彦火火出見尊も兄の釣り針を持って海に行って魚を釣ろうとしたが釣れなかった。がっかりして戻ってきた二人はお互いの幸を戻すことにした。

火闌降命> やはり私には山の幸は無理だったようだ。この弓はお前に返そう。だから私の釣り針を返してくれ。

彦火火出見尊> 実は釣り針を無くしてしまったのです・・・

火闌降命> 何!!なんて事をしてくれた、早く戻って探してこい。針を持ってこないなら弓は返さん。

彦火火出見尊は、海に戻って必死に探したが見つからなかった。そこで自分の太刀をつぶして針を作って火闌降命に返したが、しかし火闌降命はあの針でなければだめだといって受け取らなかった。彦火火出見尊は憂い悲しんで海辺に行き嘆いた。